ドコンジョタンポポ

ドコンジョタンポポ

タンポポの種の僕は、まだお母さんの所に居ます。

僕は、綿帽子です。何処に行くんだろう。

タンポポのお母さんは、言いました。

「もう、そろそろ、お別れの時です。次の風が吹いたら、旅立つのですよ」

僕は、そうしようと、風が吹くのを待ちました。

何か、凄く楽しみだなぁ。

早く風が、来ないかなぁ。

気まぐれな蝶が、やってきて、僕に向って、一ひら舞いました。次の風で、飛ぼうと油断していた僕は、飛び立ちそうになりました。それから、僕を押す本当の風が、吹いてきました。

僕は、その風に、乗って飛ばされました。

僕の降りた所は、アスファルトでした。

それから、少し風に吹かれ、転がって、アスファルトのくぼみの土で留まりました。

僕は、不服でした。

もしかしたら、あの蝶の一ひらがなければ、僕の着地点は、あのクローバーの野原だったかもしれない。僕の兄弟も沢山着地したようなのに。

何で僕は、こんな所なんだ。

あの蝶は、許せない。なんて事をしてくれたんだ。

こんな所は、絶対嫌だ。

僕は、自分の気持ちとは、関係なく、その地に根を張りました。

嫌なのになぁ。体は、アスファルトに当たって痛いなぁ。窮屈だ。

でも、僕は、成長していきました。

いつも、この道を通る坊や達が、僕を見つけました。

ある坊やは、楽しそうに、僕をちぎろうとしました。

「ダメよ、せっかく生えているんだから、こんな所で、頑張って生きている草なのよ、みてごらん、こんな硬いアスファルトの所で、」

とママがすぐに言いました。

坊やは、僕をしばらく眺めてから、言いました。

「この葉っぱさん、すごいんだね」

他の坊や達も、そう思った様でした。

ママは、

「こういう葉っぱを『ドコンジョウタンポポ』って言うのよ」と坊や達に言いました。

その日を境に、僕は、みんなから、『ドコンジョウタンポポ』って言われだしました。

ドコンジョタンポポって言われると、なんか他のタンポポより、強いタンポポになったみたいでした。

僕って強いのかなぁ

僕を見ると、みんなが、「頑張って」と言ってくれます。

お調子者の子は、「頑張れ、頑張れ」

と言って、踊りだしたり、みんなで、楽しく笑いあったりしています。

僕は、少し気分が良くなりました。

ある日の夕方、一人の女の子が、僕のそばに座って、僕を見ていました。

凄く悲しそう顔をしていました。

「タンポポさん、あなたは、強いのね」

女の子の目から、涙が、こぼれたかと思うと女の子は、

「私も頑張るわ」

と言って、去って行きました。

あの子に、何があったのだろうと僕は思いました。

ある日の夕方、小学生ぐらいの男の子が来ました。僕のそばに座って、ジーっと僕を見ていました。

「あのね、僕ね、ママと一緒に、遠い町に行くんだ。ママ、もうお父さんの所に戻らないって。

僕は、遠い町に転校することになったんだ。

僕に、力を下さい。お守に、この葉っぱ少しだけ下さい」

男の子は、僕の葉っぱを少しだけ千切って、持っていきました。

僕の葉っぱ、役に立てるかなぁ。

もし、役に立てたら嬉しいな。

僕は、その子を応援したい気持ちでいっぱいになりました。

ある日、高校生ぐらいの男の子が、やって来ました。

「こんな草なんだ」

と言いながら、僕を蹴飛ばしました。

僕の葉っぱは、宙に舞いました。

次の日、また、坊や達が、やって来ました。

「ドコンジョタンウポポが、ちぎられてる」

「えっ、何でどうして、こんなに酷いことをするんだ。許せない」

みんな、僕の事を可哀そうだと思って、

慰めの言葉と、応援の言葉をくれました。

ある日、前に僕のそばで、泣いた女の子が、来ました。

「私ね、頑張れたよ。タンポポさんのおかげだよ。

どうもありがとう」

女の子は、笑顔を見せてくれました。

僕は、ホッとしました。

僕を蹴飛ばした、男の子が、来ました。

「ごめんな」

と言いました。

そして、何処かに、去って行きました。

僕は、みんなに、励まされたり、励ましたり、

蹴られたりもしたけど、

でも、僕は、みんなに、大切にされています。

きっと、幸せです。

でも、僕が、落ちたところが、羨ましいかった、あのクローバーの野原だったら、もっと幸せだったかなぁ。

あそこの土は、柔らくて、フアフアしてるかなぁ

周りは、草や花ばかり、みんなで楽しく、お話をして暮らして、いるのかなぁ。

羨ましいなぁ・・・・・。

僕は昔、羨んだ日々と同じように、どうしても、羨ましくてしょうがなくなりました。

・・・・・これ以上、クローバーの原っぱの事は、考えないようにしよう。

何回も自分に言い聞かせました。でも、クローバーの原っぱに、行きたかった気持ちは、止まりませんでした。そんなに僕は、そこに行きたかったのかなぁ。

あの蝶の一ひらが無ければ・・・・・。あの蝶が・・・・。

僕は、うつむいてしまいました。

あれ、根もとの近くが、こんもりと盛り上がっている。

なんか、小さな葉っぱが、出てるぞ。

僕に、仲間が出来るかもしれない。

「ファ~うるさいわね、せっかく、良い気持ちで寝てたのに」

知らない葉っぱが、話し始めた。

「あなたは、本当にクローバーの野原が、好きなのね。寝ていたけど、何回も聞こえて来たわ、良い気持ちで寝てたのに」

「私は、ここに昔から根を張っている葉っぱなの。

いつも、この時期に芽を出すのよ。

此処は、たまに、あなたみたいな種が、やってくるの、

みんな、あなたと同じように、あのクローバーの野原を羨ましがるのよ。

でも、みんな、あのクローバーの野原に行くことは、できないの、当たり前でしょ」

「僕に、ここに居る幸せなんて、あるのかなぁ」

と僕は言いました。

「あら、さっき言ってだでしょ。『僕は、みんなに、大切にされています。きっと、幸せです』って

それを数えるのよ」

小さい葉っぱは、言いました。

「僕は、他に何があるだろう」

小さい葉っぱは、言いました。

「此処は、いつもお日様に、照らされているわ。心地良いでしょ。あなたは、元気そうよ。それに、こんな考え方が、良いかどうかわからないけど、

日陰の子達より、幸せよ。

ここは、マンションの敷地や畑でもないでしょ、少なくても除草剤で死ぬことも無いのよ」

僕は、自分の幸せが、他にないか、考えました。

「もし、誰かの家の庭に根を張ったら、すぐに抜かれてしまったかもしれない」

「他にも、あるかなぁ、後は分からないなぁ」

小さな葉っぱは、言いました。

「あなた、素直なのね。

こんな風に、この方法を勧めても素直にやらない、草もいるのよ。

そんな草は、ずっと悲しみながら、死んでいくの。

ただね、運なんて気まぐれなものよ。

運に振り回されて、クタクタになる一生も、少し距離を置いて、幸せな事を見つけて、生きる一生も、一生は、一生よ。

こう言うと、みんな、私が、幸せを見つける事を勧めていると思うでしょ。

ちょっと、違うのよねぇ。

どちらでも、いいと思うの。

みんな、どう生きるかは、自由よ。

その草の大切な一生を私の考えで、動かそうなんて、大それているわ。

それと、無理は禁物、自分が強いと思いすぎたら、いけないわ。幸せを見つけられずに、自分を責めてしまうなら、それは本末転倒と言うものよ」

僕は、言いました。

「そうなんだ、良くわからない所もあるけれど、僕は、幸せを感じながら生きたいなぁ。

今まで、気づかなかった、沢山の小さな幸せを感じ取りたいなぁ。

いつか、全てが、良かったと、思えるように、なったぁら良いなぁ。

いつか、幸せで、いっぱいになりたいなぁ」

「小さな葉っぱさん、ありがとう。これから宜しくね」

と僕は、小さな葉っぱさんに、お辞儀をしました。

小さな葉っぱさんも、

「こちらこそ、宜しくね」

と可愛らしくお辞儀をしてくれました。