水晶

水晶(そのうち挿絵をつけます)

ミリには、大好きなミリのお部屋があります。

四角いお部屋です。

白い壁

茶色の床

南の窓

水色のカーテン

丸いテーブル

オレンジ色のクッション

それから、それから、

沢山のお気に入りの物たち

ミリは、いつも、このお部屋で過ごすのが大好きでした。

ある日、ミリは、ふと思いついたのです。

私のお部屋はとっても素敵になったわ、なんか物足りないわね、次は何を綺麗にしようかしら

ミリは思いました。自分の好きな綺麗な服を着て、このお部屋で過ごせたらどんなに素敵でしょう。

ミリは、早速、素敵なお洋服と靴を買ってきました。

そして、新しい服を着た自分を鏡に映してうっとりしていました。

とても素敵、お部屋も洋服も素敵になっているわ。

ミリは、とても満足でした。

しかし、しばらくすると、

次は、何をしようかしら、と思ったのです。

うーん 

心を綺麗にしたらどうかしら、

ミリは、心が、水晶の様な球体でできているのを学校で習ったことがありました。

この、水晶のようなものは、生まれた時はみんな綺麗な球体で、無色で透き通っていると教えられていました。

ミリは、自分の水晶を始めて意識して見てみました。

とても綺麗な形で透き通っています。

ミリは、とても喜びました。

私は、まだこんなに綺麗な心をしているのね。

ミリの心の水晶が綺麗だったのには、理由がありました。

実は、ミリのお父さんもお母さんも、ミリのことを心から愛していて、苦難がミリに起こらないように、いつも、しっかり守り過ぎるぐらい守っていたからでした。だから、ミリの心の水晶は、それほど硬くもなければ、すぐに変色してしまう危険性のある心の水晶でした。

でも、ミリはそんなことは知るよしもありませんでした。

ミリは、素敵なお部屋に、素敵な服や靴、綺麗な心の水晶

ミリは、とっても幸せでした。

トントン

誰かが、ドアをノックしました。

ドアを開けると、きちんとした身なりの人が立っていました。

「部屋を見せてください」

ミリは、迷いました。

そして、ドアを閉めてしまいました。

知らない人を中に入れてはいけませんから。

次の日も、その人はやってきました。

そして言いました。

「君は、自分の部屋に満足しているのかい」

ミリは、言いました。

「ええ、そうよ 見てよ、とっても素敵でしょ」

その人は、部屋を見渡しました。

「もっと、素敵なものを持っているよ。あげようか」

「いらないわ」

その人は、毎日、毎日来ては、同じことを言いました。

「この部屋は、とても素晴らしい」

「今、私は、この部屋が、どのお家の部屋よりも、素敵だと思うんだ」

「だから、この綺麗なレースのハンカチを置いたら、もっといいと思うよ」

ミリも、毎回同じことを言うのでした。

「この部屋は、私の好きなものだけでできています」

「これ以上素敵なものなんてありません」

ミリはいつも断っていましたが、

いつも、素晴らしいと褒めてくれるので、

段々、その人を信じるようになりました。

置いてもいいように思えたのです。

「ありがとう、とりあえず置かせていただくわ。」

その人は、

綺麗なレースのハンカチを差し出しました。

そして、どこかに行ってしましました。

「悪くないわね」

とりあえず、ハンカチは、南の窓の近くのタンスの上に置きました。

その夜、

大きな音がしました。

強い風も吹いてます。

ミリは、身を丸めてしゃがみ込んでしましました。

ハンカチが爆発したのです。

ちりぢり、になったハンカチは、またそこで、爆発しました。

そうして、ミリの部屋の半分が壊れて、どこかに飛んで行ってしまったのでした。

ミリは、呆然としていました。

ミリ自身が壊れたように感じました。

強い風も、やみません。

水色のカーテンも丸いテーブルもオレンジ色のクッションもお洋服も靴も、

全部、吹き飛ばされてしましました。

外は暗かったのですが、月明かりが差し込んでいました。

何処からか、変な音が聞こえてきます。

気持ち悪い沢山の生き物がやってきました。

白い壁は、大きなクモが食べだしました。

茶色の床は、茶色の虫とミミズが食べていました。

ミリの大好きなお部屋とお洋服と靴だったのに、

ミリがこれまで生きてきた大切なもの達だったのに、

あの人が、ミリの世界を壊したのです。

どうやったら、元のようになるのでしょ。

全く分かりません。

そして、なかなか、朝は来ませんでした

光が、ほとんどない夜をミリはひどく怖がりました。

「どうか、早く朝になりますように」

「太陽さま出てきてください」

ミリは、東の方角に向かって、お祈りしました。

すると、西から、夕日が射してきました。

ミリは、ビックリしましたが、暗闇よりはましでした。

「太陽さま、どうもありがとうございます」

「この部屋を直したいと思います」

と言いました。

ミリは、大工のおじさんたちを呼んできました

大工のおじさんが言いました。

「これは何だ、なんで虫が家を食べているんだ」

大工のおじさんは、壁の一部を割って食べてみました。

「なんだ、これは、甘い飴で、できているぞ」

大工のおじさんは、床を割って食べてみました

「なんだ、これは、チョコレートでできているぞ」

ミリは、ビックリしました。

どうして、ミリのお部屋は、お菓子でできているのかしら。

ミリは思いました。

おじさんたちは、言いました。

「こんな部屋は、元には、直せないよ」

ミリは、クモと虫とミミズが、部屋を食べているのを眺めているしかありませんでした。

太陽は、夕焼けの色のまま、また西に沈んで行ってしまいました

その後も、西から太陽は上がりましたが、すぐに沈んでしまいます。

長い夜が続き、そして、ほんの少しの間、夕日が出ては、沈んでの繰り返しでした。

ミリの、部屋はもうどこにあったのか分からなくなりました。

ミリは、疲れ果て体が、だるくなってしまいました。

歩くのも大変です。もうこんなに身体が重くては、何もできません。

でも、ミリは思いました。

「こんな事、たいした事ではないわ」

「違うお菓子で、今度は、もっと素敵なお部屋を作ろうかしら、そこには、虫よけの防虫剤を混ぜ込むの」

ミリは、自分で自分の事を励まそうと、大きな声で笑ってみました。

でも、効果はありませんでした。

「私は、何があっても大丈夫、私は何でもないの、私は、むしろ良いことをしてあげたかもしれないわ、クモも、虫もミミズもきっとお菓子を食べられて喜んだのよ、いいことをしてあげたの」

「服だって、もっと私にふさわしい高級服、高級靴だってあるわ、無くなっても私は関係ないの、問題なんてないわ」

「だから、大丈夫よ」

「私は、何でもないの」

そういって、励ましても、

ミリの身体は、どんどん重くなってきました。

ある日、ミリにハンカチをさしだした人がやってきました。

「ハンカチは、どうでしたか」

ミリは言いました。

「あなたが、くれた物ですものとても素敵なものでしたよ」

ミリは、自分の言葉にビックリしてしまいました。

その人は言いました。

「おかげで、うちの虫たちもとても喜んでくれました」

「餌代も省けましたし、こんなにいいことは他にありません」

「また、素敵なお部屋を作ったら、今度は、直接あの子たちに、あなたのお部屋を食べさしに行きますよ」

ミリは、愕然としました。この人には、悪気が全くないのです。

ミリの大切なお部屋、服、靴をなくさせたのに、嬉しそうに笑っているのでした。

ミリは、怒りを覚えましたが、

どうしたことでしょう、文句が言えません。

さっきまで強がりを言っていたからでしょうか。

何かの強い力が、ミリをそうさせてしまっているのでした。

そして、身体が重い日々はずっと続いていました。

ある、夕方、ミリは、目を覚ましました。

おかしい、

身体がとても軽いのです。

いったいどうしたのでしょうか。

ふと、顔を触ってみました、顔じゅうが濡れていました。

雨でも降ったのでしょうか。

ミリの、服も、周りの土も濡れていません

「あっ、もしかして」

ミリは気付いたのです。

もしかして、私は、泣いていたの?

何も覚えていないわ。

だって、全く夢を見ていたのを覚えていないわ。

でも、今の今まで、泣いていたはずよ、だって、こんなに涙が顔についているのだもの。本当に、何があったのかしら。

そうだ、私の心の水晶、

ミリは、心の水晶を見てみました。

すると、大変なことになっていました。

水晶は、

鈍器のようなもので、強く叩かれたように、無数のヒビが入っていました。

そして色は、透明ですが、赤くなっていました。

ミリは、何でもない、何でもないと、どんなに強がりを言って聞かせても、ミリの心まで守ることは出来なかったのです。

ミリは、この場所に居てはいけない。

何処かに行かなければ、と思いました。

しかし、

夕方が終わり、夜が来てしましました。

そして、また、長い、長い夜がやってきました。

夕日が上がり、

ミリは、歩き出しました。

ミリは、自分の心の水晶に言いました。

「もう、あなたは直らないの」

心の水晶は言いました。

「直る見込みは、ありません。1度にこんなにヒビが入ってしまったら、そのうちすべてが粉々に砕けてしまいます」

「水晶の欠片を拾い集めても、欠片は欠けらです」

ミリは言いました

「それでは、私の心は、無くなってしまうじゃないの」

ミリは、それを聞いて絶望的な気持ちになりました。

水晶は、続けました。

「ただ、1つだけ方法があります。あなたの心の水晶の欠片を1つだけ残して、後は全部捨てて下さい」

「たくさん残してはいけません、必1欠片です」

「そして、待つのです。太陽が東から昇る時を、それは、長い、長い時間がかかるでしょう」

「ただ、待ってください」

そう言うと、赤くなった心の水晶は砕け散りました。

この水晶がくずれると、ミリにとっては、恐ろしく怖く、暗い闇に吸い込まれてしまいそうな感じがしだしました。

ミリは、心の水晶が言ったように、水晶の1欠片を残して、全ての欠片を捨てました。心を捨てるということは、こんなにも悲しく辛いことだとは思ってもみませんでした。

赤い心の水晶の欠片は、ミリに言いました。

「私は、どんな事があってもあなたと共にいます。あなたは、私を選んでくれたのです。今は、赤くそして鋭利な欠片ですが、私は、あなたと共に東から太陽が昇るのを待ちます。決してこれ以上割れないように頑張ります。だから、私を信じて下さい。」

ミリは、欠片を信じました。

信じるしか道はありませんでした。

ミリも欠片が、これ以上砕けないようにできるだけ優しく欠片を抱きました。

「欠片が、これ以上割れてしまいませんように、早く太陽が東から昇りますように」

念仏のように心で繰り返しお祈りをしました。

ミリと欠片は、待ちました。本当に長い間待ちました。

小さな欠片と過ごす時間は、それは、それは、心細いものでしたし、不安な日々でした。

そして、5年、10年と時は過ぎていきました。

そして15年目のある日、とうとう太陽が東から昇ったのです。

「昇ったわ、東から太陽が」

「ついに、待っていた時が来たの」

ミリは、飛びあがりました。

心の水晶の欠片は、言いました。

「これで私は、大きく成長することが出来ます」

その日から、心の水晶の欠片は丸くなりだし、色が無色透明になり成長を始めました。

そして、成長していく自分の心を感じながらミリは、

「今度は、本物のお部屋を作ろう、そして、この心の水晶をしっかり守っていこう」と思うのでした。