小人とムエマ

小人とムエマ

あるところに、ムエマと言う女の子が、住んでいました。

ムエマは、生まれた時から動いていたかと思うと体が急に動かなくなってしまい倒れてしまう病気を持っていました。

ムエマのお母さんは、ムエマの病気が治るようにあちこちの病院に行ったのですが、どのお医者さんもどうしたらいいか分かりませんでした。

ムエマは少女になりましたが、いつも自分の部屋から外を見ていました。

外はどんな世界かしら、私はこのお家から出たことがないの。

ムエマのお母さんは、ムエマのことをいつも心配していました。

だから、ムエマを外に連れ出すことはありませんでしたし、一人で外に遊びに行かせませんでした。

ムエマは、いつものように、外を見ていました。

「ねぇ、」

ムエマは、ビックリしました。

そして、辺りを見渡すと

窓辺に、背丈が10cmぐらいの男の子が立っていました。

「あなた、誰。もしかして、小人さんなの」

ムエマは、訊ねました。

男の子は、

「そうだよ。僕は、小人さ。旅をしてるんだ」

と小人は、言いました。

ムエマは、とても興味を持ちました。

そして、

「旅って、何処から、何処まで、旅をしているの」

ムエマは、小人に訊ねました。

小人は、

「気の向くままさ、何処に行くかは、あまり決めてないよ。

綺麗な山があると聞けば、その山に行ってみるし、綺麗な滝があると聞けば、そこに行くよ」

ムエマは、訊ねました。

「じゃあ、今は、何処に、行こうとしているの」

「この近くの泉だよ。有名だろ。

10年ぐらい前に、この近くの泉に来たんだ。

とっても綺麗で、水が青く澄んでいるって、そして、妖精がいるって、噂を聞いたからさ。行ってみると本当に綺麗で、今まで見た泉の中で、そうだなぁ、126番目ぐらいに綺麗だったなぁ。

泉の妖精にも会ったよ。

妖精は、可愛いくて、いつも、泉で暮らしているんだ。

それが、最近その泉の水が枯れ木色になってしまっている、という噂を聞いたんだ。

どうしたんだろうと思って、また、行ってみようかと思ったんだ」

小人は、答えました。

ムエマは、

「そういえば、昔綺麗だった泉があるのは知っているわ。あなたが言うように、その泉が、汚くなってしまったって」

小人は、言いました。

「僕と一緒に、その泉に行ってみないかい」

と言いました。

ムエマは、そんなこと無理、と思いましたが、段々行ってみたくなりました。

「私、急に体が、動かなくなってしまうの。生まれた時からよ。」

小人は、言いました。

「でも、一回くらい自分で、何処かに行ってもいいんじゃない」

ムエマはすぐ、その気になってしまいました。

そして、小人は、ニコッと笑って言いました。

「明日、行ってみない」

ムエマは、

「うん」

と言いました。

「じゃ、明日の朝また来るよ。きっと楽しい散歩になるよ」

そう言って、何処かに行ってしまいました。

ムエマは、明日の散歩のことを考えると興奮して、なかなか眠れませんでした。

次の日の朝早く、小人がやって来ました。

そして、2人でこっそり家を出ました。

小人が言いました。

「今日は、良い天気だ。きっといいことが起こるよ。僕には、分かるんだ」

ムエマは言いました。

「私も、そんな気がしてきたわ」

でも、泉に行く途中、ムエマは、また、身体が動かなくなってしまいました。

急に動かなったので、道端にも身体をよけられませんでした。

ムエマの首は、うなだれ、両腕、両足は、地面にだらんと投げ出されていました。

小人は、落ち着いていました。そして、こう言いました。

「こういう症状の子を知っているよ、何人か見たことがある。でも、僕と一緒に遊びに行くと、元気になっちゃうんだよ」

ムエマは、言いました。

「そうなると、嬉しんだけど」

でも、ムエマは嘘だと思いました。

向うから、2人のおばさんが楽しそうに話しながら歩いてきました。

小人は、言いました。

「僕、ちょっと隠れるね」

そう言って、草むらに飛び込んでしまいました。

ムエマの所まで来ると、一人のおばさんが、ムエマに言いました。

「大丈夫、どうしたの、こんな所で」

ムエマは、言いました。

「大丈夫です。何でもありません」

おばさん達はこんな所にムエマを座らせていてはいけないと思いました。

「あそこの、ベンチに座ったらいいわ、その方がいいでしょ」

ムエマは拒みましたが、二人のおばさんはムエマの肩に手を回し、無理やりムエマをベンチまで運びました。

ムエマは、本当に大変で、大変でしょうがありませんでしたが、おばさん達は座ったムエマに微笑んで満足そうに歩いて行ってしまいました。

おばさん達が見えなくなると、小人が草むらから出てきました。

ムエマは、小人に言いました。

「ひどい目にあったわ。こういうのって、おせっかいって、言うと思うのよ。そう思わない」

小人は、どこ吹く風で

「そうかい」

と言っただけでした。

1時間ぐらい、ムエマが座って休んでいると、少し体調が良くなってきました。

これなら泉に行けるかもと思いました。

そして、小人に言いました。

「そろそろ、動けそうよ」

小人とムエマは、二人でまた、歩き出しました。

すると、1、2分で、また、動けなくなりました。

前と同じように、急に動かなったので、道端にも身体をよけられませんでした。

今度は、おじいさんとおばあさんがやって来ました。

小人は、また、草むらに飛び込んでいきました。

そして、おじいさんとおばあさんはムエマに近づくと、

おばさんがムエマに言いました。

「大丈夫、どうしたの、こんな所で」

ムエマは、言いました。

「大丈夫です。何でもありません」

おじいさんとおばあさんは、こんな所にムエマを座らせていてはいけないと思いました。

「あそこの、ベンチに座ったらいい、その方がいいでしょ」

ムエマは、拒みましたが、おじいさんとおばあさんはムエマの肩に手を回し、無理やりムエマが来た道を引き返してしまいました。

そして、ムエマをもといたベンチまで、運びました。

ムエマは、本当に大変で、大変でしょうがありませんでしたが、おじいさんとおばあさんは座ったムエマに微笑んで満足そうに歩いて行ってしまいました。

おじいさんとおばあさんが見えなくなると、小人が草むらから出てきました。

ムエマは、小人に言いました。

「ひどい目にあったわ。こういうのって、おせっかいっていうと思うのよ。そう思わない。

また、元のベンチに戻ってしまったわ。

何でみんなこんなにおせっかいなの」

1時間ぐらいムエマは座って休んでいると、また。少し体調が良くなってきました。

これなら、泉に行けるかもと思いました。

そして、小人に言いました。

「そろそろ、動けそうよ」

小人が、言いました。

「この草を噛んでごらん、きっと、もっと楽になるよ」

ムエマは、その草を食べてみました。

「なんか、イチゴの味がする。この葉っぱ美味しいわね」

小人とムエマは、二人でまた、歩き出しました。

小人が、言いました。

「なんか感じない」

ムエマは、言いました。

「何も感じないわよ」

小人は言いました。

「道端の草が、嬉しそうにしてるだろ、それに歌っているよ」

ムエマは、目をこらし、耳をすませました。

ムエマは、言いました。

「本当、木葉っぱは、みんな自分の好きなように動いて、嬉しそうにしているわ、何か歌っている」

葉っぱは、

「待っていました。歓迎します。ルルルルル。待っていました。歓迎します。ルルルルル」

と歌っています。

女の子は、言いました。

「本当に、そうね、ビックリしたわ。葉っぱが、歌っている。何を待っているのかしら」

小人は、言いました。

「そのうち分かるよ」

小人が言った通り、イチゴ味の葉っぱのおかげで、ムエマは休むことなく泉にたどりつきました。

ムエマはやっと来られた、という充実感がありました。

しかし、噂通り、泉は、枯れ木色でした。でも、泉の周りは、とっても綺麗な花でいっぱいでした。

滑稽な景色でしたが、ムエマは、花に見とれていました。

そこに、帽子を花で飾った。ぽっちゃりしたおばあさんがいました。

おばあさんは、ムエマを見ると、

「ここの花は、とっても綺麗でしょ」

そう言いながら、綺麗な花をたくさん、摘んできてくれました。

ムエマは、摘まれた花が、少し、可哀そうに見えました。

おばあさんは、言いました。

「花はね、摘まれてもね、花を贈られた人が喜ぶと、摘まれた花も喜ぶんだよ。

摘まれているのに、不思議だねぇ」

それを聞いて、ムエマはもう一度、花を見ました。

とても綺麗で、良い香りがします。

ムエマは、幸せそうな、安らぐような気持ちになりました。

おばあさんは、言いました。

「あんたの中にも、花が咲きだしたよ。花には、不思議な力があるんだねぇ、嬉しいねぇ、楽しいねぇ、あっ、そうそう、こうしちゃいられない、他の草にも、元気をあげて、次の場所に行かなくちゃ、忙し、忙し、いつか、また会いましょうねぇ」

そう話すと、おばあさんはにっこりと微笑んで、花びらのつむじ風になって、何処かに消えてしまいました。

ムエマは、ビックリしました。そして、あのおばあさんは、何だったのかしらと思いました。

小人は、言いました。

「あの、おばあさんは、花のおばあさんって言って、僕たちの様な変わり者の中では、有名なおばあさんだよ。ああやって、花の力や草の力を最大限に引き出して、花や草を美しくさせるのが、仕事なんだ」

ムエマは、おばあさんの摘んでくれた、花を抱きしめました。

そして、ムエマの中で、本当に綺麗な花が、咲いたような気がしました。

ムエマは、花のおばあさんのことは、おせっかいだと思いませんでした。

だって、こんなに幸せな気持ちに、させてくれたのですから。

ムエマは、小人に言いました。

「さっき道端で、会ったおばさんやおじさんは、おせっかいだと思ったのに、今度のおばあさんは、親切に感じたわ。でも、みんな幸せそうに微笑んでくれたわね。この違いって何かしら」

小人は、少し考えてから言いました。

「きっと、違いはないと思うよ」

ムエマは、言いました。

「私も誰かに、何かしてあげたら、微笑めるかしら。だって、私、他の人に、何かしてあげたことが無いのですもの。親切をしようとしてる人に拒まれれば、止めればいいわ。私きっと親切な人に、なれるような気がしてきた」

小人は、言いました。

「そうだなぁ、今、一番助けを必要としてるのは、この枯れ木色の泉だと思うよ。人間じゃないけどね」

ムエマは、言いました。

「この泉ねぇ」

泉の水に、ムエマが、手を入れた時です。

枯れ木色の泉の水がムエマの手を伝って、ムエマの身体を染め始めました。

どんどん、枯れ木色の水がムエマを染めていきます。

その代り、泉の水はムエマの反対の岸から綺麗になり始めました。

ムエマは、泉から手を抜こうとしましたが抜けません。

とうとう、ムエマの身体は、全部、枯れ木色になってしましました。手は、木のようになってしまいました。

その代り、泉の水は、青く澄んだ色になりました。

小人は、言いました。

「泉が、元の色に戻った。でも、君は、枯れ木色になってしまったし、手も木みたいになってしまったね」

ムエマは、自分の手足を見ました。みんな色は枯れ木色です。手は、木みたいになっています。

ムエマは、泣き出してしまいました

道端で会った、おばさんやおじさんは嬉しそうに微笑んだのに、これでは、もともこうもありません。

ムエマは、言いました。

「私もみんなと同じように、微笑みたかっただけなのに」

泉の中から、妖精が、出てきました。

妖精は、ムエマに言いました。

「泉を綺麗にしてくれて、ありがとうございます。でも、あなた様が、こんな枯れ木色の肌と木の手になってしまって、本当に申しわけございません」

妖精は、とっても申し訳なそうな、顔をしていました。そして、こう話し始めました。

「実は、私たちは、泉の妖精です。ですから、この泉を綺麗に保つのが仕事です。しかし10年前に、この泉に来た男が、昼ご飯を食べようと、バックの中から、パンを取り出した時、一緒に何やら包みが出て来て転がって、この泉に落ちたのです。とても、強い魔力でした。私たちは、一生懸命綺麗にしようと頑張りましたが、このようなことになってしましました。

神様はその様子を見て、とてもお怒りになりました。そして、男をそこに立っている木に、私たちを泉の底に、沈めてしまったのです」

ムエマは、言いました。

「この木が、人間だった・・・この木も可哀そうに」

ムエマが、何気なく触った時です。

今度は、ムエマに激痛が走りました。

木は、煙に包まれました。そして、男が出てきました。男は、包を持っていました。

ムエマと妖精は、ビックリしました。小人は、相変わらず、涼しい顔をしていました。

男は、自分の手足を見ました。そして、急いで、泉に顔を映しました。

男は、

「やったー」

と叫びました。

妖精が、言いました。

「あなたの包みのせいで、私たちは、泉の底に10年間も閉じ込められてしまっていたのです。この子の親切心で、私たち妖精もあなたも助かったのです。

しかし、この子は、一人で代償を背負うはめになってしまいました」

男は、枯れ木色の肌で、手が木になってしまっているムエマを見ました。

男は、言いました。

「本当に、申し訳ないことをしました。申し訳ございません」

男は、何度も謝りました。

ムエマは、もう、起こってしまったことは取り返しがつかないと思いました。

そして、どうせ、私は、家に居て外に、出られない体ですもの、かまわないわ、と思いました。

そして、言いました。

「気にしないで下さい。あなたが、人間に戻れたことは、良かったことではありませんか。私は、家に帰ります」

そう言って、花束をもって帰ろうと思いましたが、小人が居ません。

探しましたが、見つかりませんでした。

仕方なく、一人で帰ることにしました。

ムエマは、トボトボと歩き出しました。男も同じ道を後ろからついてきました。

妖精は、ムエマと男が、消えるまで、見送っていました。

男は、ムエマが、道を曲がると、同じように曲がって来ました。

ムエマは、別に気に留めませんでした。

途中、また、ムエマは、急に歩けなくなって、道に倒れ込んでしましました。

それを見た男は、急いでムエマに駆け寄り、ムエマを抱きかかえて、言いました。

「どうしたのですか、おじょうさん」

ムエマは、言いました。

「持病で、勝手に体が動かなくなるのです。私は、そのうち動けるようになります。どうぞお先に行ってください」

男は、ビックリしました。

そして、こう言いました。

「ムエマ、お前は、ムエマと言う名前ではないかい」

ムエマは、なんのことだか、良くわかりませんが、

「私は、ムエマですけど・・・」と言いました。

男は、ムエマを強く抱きしめて言いました。

「僕は、君のお父さんだよ。お前の薬を探して、世界中を探して、やっと薬を見つけたんだよ」

ムエマは、ビックリしました。

しばらく、呆然としましたが、

「私のお父さんなのですね。あぁ、お父さん、私の為に、木にされていたなんて、知りませんでした。・・・どうもありがとうございます」

ムエマのお父さんは、ムエマをおぶって、家に向いました。

そして、家に着くと、お母さんは、ビックリしてしまいました。

もう、帰ってこないと思っていた、お父さんと全身が枯れ木色で、手が木の様になっているムエマが、帰ってきたからです。

家に入ると、お父さんは、今までのことをお母さんに、説明しました。

そして、お父さんは、言いました。

「この包は、実は、薬なんだ。この薬は、捨ててしまったほうが、良いかなぁ」

ムエマは、言いました。

「そんなことをするなんて、もったいない。私は、飲みます」

そう言うと、ささっと、薬を飲んでしまいました。

ムエマが、煙に包まれると、ムエマの身体は、綺麗な元のムエマの身体になりました。

お父さんとお母さんは、言いました。

「ムエマ肌の色に戻っているよ。手も戻っている」

ムエマは、言いました。

「体が、元の身体になっている。やったぁ、嬉しい」

その晩は、お母さんが、腕によりを掛けて、ご馳走を用意しました。

そして、ムエマが、花のおばあさんから貰った綺麗な花束も、食卓に飾りました。

家族は、3人で10年越しの食事をとりました。

お父さんは、言いました。

「ムエマ、明日も泉に行かないかい」

ムエマは、小人のことが、気になっていたので、

「3人で、行ってみましょう」

と言いました。

次の日、3人は泉に向いました。

ムエマは、一度も止まることなく、泉まで、歩いて行くことが出来ました。

お父さんも、お母さんも、ムエマの持病が、治ったと大喜びしました。

ムエマは、小人は居ないかと、辺りを見渡していると、草陰から小人が出てきました。そして、満足そうに微笑むと手を振って、草むらの中に消えていきました。

ムエマは、この出来事は、小人がムエマの病気を治そうと、最初から仕組んでいたのではないかと思いました。

だって、

「僕と一緒に遊びに行くと、元気になっちゃうんだよ」

と言っていました。

ムエマは、心の中で小人にお礼を言いました。

それから、3人は、幸せに過ごしました。